変動26 | 秘密の扉

秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして

「昨日の朝洗濯機が壊れちゃって、さっき○電気に買いに行ったんだけどぉ。すげぇんだよ。原発利権民。俺とお袋が一番安い洗濯機29800円にするか、もう少し大きい34800円にするか30分くらい悩んでたら、その横で50インチのでっけぇテレビとかぁ斜めに入れる洗濯機とかぁ、冷蔵庫とかチン(電子レンジ)とかいろいろ買っててさ。全部で1本くらい行くんじゃね」
「どういうこと?」
「8月一杯で避難所が閉鎖されるだろ。奴ら金があるから仮設住宅なんて入らないでキャッシュで広い新築を買うんだよ。ハウジングメーカーも忙しそうだしぃ。洗濯機すぐ来ないとおふくろ困るじゃん。俺店長と仲良かったから、聞いたら『徹さん、注文に配送が間に合わなくて早くて9月になってしまうんです。すいません』だって、これどうよ。あっという間に1本の客のほうに行っちゃって…そりゃそうだよなぁ、こっちは5000円の差で30分も悩んでるんだぜ。うふふん、俺が店長でも同じようにするさ」

「…いろいろ思うことはあると思うけど、もう仕方が無いんだよ。そうやってお金のある人たちにバンバン使ってもらわないと経済が廻っていかないじゃん。経済が廻らないと復興も無いじゃん」
「大熊町なんか住民税も無かったし、全く東京電力様様だよなぁ…あれ?なんか…ヨーグルトかなんか食ってるだろ」
「あはは、ばれちゃったか」
「最近doorちゃん家で何やってるかだいたい音でわかるようになってきた」
「そんなにいろんなことはしてないけどさ。
 もう仕方が無いんだ。だって私達が選挙で選んだ結果が今じゃん。まさかこんなことになるなんて思いもしなかったけど、結局私達みんなの責任なんだよ
 徹ちゃんは選挙にちゃんと行ってた?」
「ふふん、俺ぇ、今まで一度も行ったこと無かったけどぉ、前回は高速がただになるって聞いて民主党に入れた。周りにも呼びかけて結構な票数入れさせちゃった」

「はぁぁぁぁ~。バカだねっ。今こうなったのは、そうやって無関心でいた結果なんだよ。
目先の利益に踊らされて投票してっ。だけど原発推進してきたの自民党だから、そこどうなのよって言われたらゴメンと謝るしかないんだけど。
それにこんなことになったけど、日本のエネルギーを考えるなら原子力はやっぱり必要でもあったんだ。それは分かるでしょ?どっちがマシかで選ぶのが政治。だいたいの大枠で方向性を決めてやっていくのが政治。

だから、民主党が政権とって今度代表選挙になるでしょ。今回は違うけど、通常の代表選挙では外国人が参加して選ぶことが出来るんだよ。それで日本にとっていい代表が選ばれるのか?

何万人の外国人が組織的にやったら、その国の思い通りになるんだよ。まさかそんなってことが現実に起こる。原発がこうなったように。

今起こっている戦争はドンパチじゃない、火薬を使う戦争なんて時代遅れで、今水面下で現実に日本は侵略されているんだよ。それをちゃんと認識しないと。

現実、菅も前原も外国人から献金もらってるし、仮設住宅の資材だって外国から輸入してる。なんなの?これは。

ここはいったいどこの国?どこの国の利益を考えているの?それだけとっても民主党に入れたら拙いって分かるじゃん、とにかく…」

いつも徹一人で話しているのに、政治の話になって私は止まらなくなった。この10倍くらい話した。

「はぁ~、doorちゃんが熱く語るの初めて聞いたわぁ。語る語る。」
「当たり前でしょ、今の政治は私達の無関心と思考放棄の結果なんだから。だから酷かも知れないけど、こういう結果になった責任の一端は徹ちゃんにもあるの」
「じゃ次の選挙でどこに入れたらいいかdoorちゃんに聞くから教えてね」
「だからぁ」と言いかけてやめた。
そこを一人ひとりが自分できちんと考えることが原発事故を防ぐ手立てになったかもしれなかったのに。思考放棄で「分かりやすい政治」「原発は安全」のプロパガンダに日本中が踊っていた。



もうひとつ気になっていたことがあった。
「一昨日徹ちゃんと話した後、喉のチャクラが痛くなって」
「チャクラ?のどちんこ?」
「喉そのものは痛くないんだけど、経絡的に詰まってる感じで。初め頭が痛くなってオーラの調整したら、今度は喉が痛くなった」
私と同じように徹も人ごみが苦手だといっていたから、おそらく理解してもらえるだろうと思って話し始めた。
「オーラねぇ…」
「話をしていると、相手の向こうが見えてしまうっていうか、その人の無意識に感応するっていうか」
「霊的な事とは違う別の事が見えてしまうような?」
「霊といえば霊なんだ。魂のことだからね
 うちの家系はそういうとこ敏感で、だから浄化方法もあるんだけど」
「俺は霊的現象が見えてて苦しんだ時あったけどね」
やっぱり。
「まぁ、その手の話はどうでも良いけど…
 別に徹ちゃんを責めるわけではないし、私が好きでやっていることだけど、一昨日の徹ちゃんは、酷かった。ちゃんとクレンジングすればいいって分かったし。でも一昨日は頭痛かったんじゃない?そうでもなかった?」
徹はしばらく黙っていた。